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最高裁判所第二小法廷 平成2年(行ツ)145号 判決 1991年1月25日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人中原恒彦、同面洋、同岡田進、同戸水武史の上告理由中、法令の解釈の誤りをいう点(同第一ないし第四、第六)について

原審が適法に確定したところによれば、上告人嶋崎均は実在人嶋崎譲の二歳年長の兄であるところ、本件選挙当時において、上告人嶋崎均は、四期連続して参議院議員選挙に当選した石川県選挙区選出に係る自由民主党所属の参議院議員で法務大臣等を歴任した政治家であり、他方、右嶋崎譲は、六期連続して衆議院議員に当選した石川県第一区選出に係る日本社会党所属の衆議院議員で衆議院物価問題に関する特別委員会委員長等を歴任した政治家であつて、共に石川県下ではもとより全国的にも著名人であるなどの事情が存在するというのであるから、このような事情の下においては、漢字、平仮名、片仮名で記載された「しまさきゆずる」、「しまざきゆずる」と読むことのできる投票一六三七票(原判決添付別紙一(一)記載のもの。以下「本件投票」という。)は、本件選挙の候補者である上告人嶋崎均の氏名の誤記として同上告人を指向したものか、候補者ではない右嶋崎譲を指向したものか、そのいずれとも認め難いものというべきであり、したがつて、上告人嶋崎均に対する有効投票とはいえないとするのが相当である。ところで、上告人嶋崎均は、本件投票を含む一九五五票を自己に対する有効投票と主張しているのであり、これから本件投票を差し引くと残りが三一八票となるが、原審の適法に確定したところによれば、当選人とされた候補者粟森喬と上告人嶋崎均との票差は一一七一票であるというのであるから、たとえ右の三一八票の全部を上告人嶋崎均に対する有効投票と仮定しても右粟森喬との票差には満たず、してみれば、上告人嶋崎均の当選無効請求を理由がないものとした原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。

同上告理由中、理由不備の違法をいう点(同第一、第五、第六)について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤島 昭 裁判官 香川保一 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)

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